バーバラの午睡

主婦の気晴らしお楽しみ。例えばメイドカフェとか。チョコミントとか。

春まだ浅き東京で、思いがけない優しさに触れた話

気づけば今年初めてのブログ記事だったわ・・・。
ちょっと珍しい体験をしたので、その時の事を書こうと思います。

 

【2022年2月】
その日、私は電車で某所に向かうところだった。
発車メロディが鳴る中、電車に乗り込み、ふう間に合ったわー、と一息つく。


その一息も吐ききらぬかの瞬間に。
目の前の座席にいた女性(私よりやや年下の感じ)が、はじかれたように立ち上がり、
「あっどうぞ!座って下さい!」
と、私に席を譲ってくださったのだ。


へ??なんで??


私は、別に自分を若いと思ってる訳ではないが、かといって席を譲られるほどのヨボヨボでもない(多分)。
そして、電車に乗るのに少し急いだけども、そこまでヨレヨレでもない(多分)。


突然のことにどぎまぎしつつ、「いや別にあの、今、体調悪いとかはないので・・・」とご遠慮申し上げたのだが。
女性は重ねて「いやでも、不安定な感じだから、どうぞ!」と仰る。
そしてそのまま、彼女は近くの席にいた、お連れの方の所にサッと行ってしまわれた。


こういう時、余りに頑なでいるのもよろしくないので、「じゃあ遠慮なく。ありがとうございます」と座ったんだけども。
何とも釈然としない気持ちではある。


「不安定」って・・・なぁ・・・。
そんなにヤバそうな様子に見えてしまったのかしら私・・・と若干凹みつつ、電車に揺られることしばし。
ハッと思い当たった。


「不安定」というのは、
「私の見た目が不安定」ではなく、
「電車が不安定」と、いうことではないか??


ひょっとしてこれは・・・もしかして・・・
高齢妊婦に、間違われたのでは、なかろうか??


念の為言うと、私は成人済の子供を持つ中年女(なんなら初老寄り)であるが。
それでも、思えば思うほど、その時には誤解されやすい要素が揃いまくっていた。


その日の私の服装は、Iラインのジャンパースカート、丈の短いアウターにマフラーを巻き、足元はフラットのブーツであった。
「胴回りと臀部の(加齢による)ボリューム感を、せめてカモフラージュしたい」という、涙ぐましいセレクトである。
しかし。
腹部を目立たなくさせるスタイル。
体を冷やさないようなアイテム。

加えて、転ばなさそうな安定感ある靴。
これらは妊婦スタイルの定番ど真ん中だ。無意識だったけど。


更に、時節柄着用していたマスク。
(しかもちょっと可愛子ぶった、パステルピンクの"小顔に見えるマスク")
これで顔は半分覆われている。
そして、私は常に眼鏡を掛けている。
顔の上半分は眼鏡。下半分はマスク。
これじゃ顔なんて、見えてるようで実質見えてないようなものである。


ダメ押しで、私の返答。
「体調悪いとかはないので」
これも「元気な妊婦なので平気です」と受け取られた可能性が・・・ある・・・かも。


更に言うと、その女性は「とても決断の早そうな」(言い方を変えれば少々早とちりしやすそうな)雰囲気の方だった。


これらを総合して考えると、
「メンタル不安定そうな人に席を譲る」よりも、
「揺れる電車が不安定だから妊婦(っぽい人)に席を譲る」方が、シチュエーションとしては全然「あり」だよなぁ・・・。


わーーーこれどうしよーーーマジで。
女性の親切心へのありがたさと、欺しているような後ろめたさと。
混乱している私を乗せて、電車はぐんぐん走る。


しばらくの後、私は心を決めた。
「思われた通りの私として、ここに在ろう」と。


そう思うと少し穏やかな気持ちになった。
行きがかり上これが正解だ、きっと。
(そして、遠い日の、リアル妊婦として席を譲ってもらっていた頃の記憶が蘇り、甘酸っぱい気持ちになったりもしていた)


電車がとある駅に到着する。
先の女性と、そのお連れ合いと思しき男性が、二人で談笑しながら電車を降りていく。
私は顔を上げ、「おかげさまで助かりました、ありがとうございました」と小声でお礼を告げた。
それに笑顔で応えてくださるお二人。
ドアが閉まり、ささやかなご縁はここに幕を閉じたのであった。


・・・と、いうことがあったのでした。


いやあもうびっくりしたよ。
まさかこの年で妊婦さんに間違われるとは(←多分)。


しかし、人様の思いがけない親切に触れた事は幸運だと思ったし、更に言うとちょっと面白かった。
そして何より、体型も服装も紛らわしくて、ほんと申し訳なかった。


そして改めて、あの時の事を思い返す。
あの方は多分、常日頃から、「人に優しくする」という事に全くためらいのない、素晴らしいお心の持ち主なのだと思う。
だって、私が電車に乗って声を掛けてくださるまで、本当にあっという間の事だったよ??
私が同じシチュエーションにあったら、どうでもいい逡巡をしてしまって、とてもそんな即断で対応は出来ないよ。
こんなに素敵な方がいらっしゃるんだなぁ・・・と感動を覚えた次第です。


こんな場所で何かを言って、伝わる事は全然無いと思うけども、
改めて、通りすがりの女性の方、その節はお気遣いどうもありがとうございました。


そのお優しさに接する機会があったことを、本当にとても嬉しく思います。
きっと、これからも色々な方にどんどん優しくしてくださることと存じます。
そういう方が、この東京の空にいらっしゃるということが、私にも励みになるような気がしています。


お優しく、笑顔が素敵なあなた様に、どうか幸多からんことを。
心からお祈り申し上げます。

 

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 全然今回の記事と関係ないですが、こないだ公園に咲いていた梅。春はそこまで。