バーバラの午睡

主婦の気晴らしお楽しみ。例えばメイドカフェとか。チョコミントとか。

素敵の飽和状態の贅沢。「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」

【2023年3月】
ある作家の絵がある。

猫や鳥や正体不明の謎の生き物、草木や花などが沢山描き込まれている。
動物たちは毛並みや肌の感じ、体温まで伝わるよう。
それぞれに表情があり、可愛らしい仕草があり、物語性も感じられる。
植物は花弁も葉脈も木肌も、手触りまで伝わるような描写。

絵の中のどこにフォーカスしても見応えがあり、「これずっと見ていられるね!」という絵。
原画ならではの繊細な線の美しさが目に、心に染み入る。

そんな素晴らしい絵が、会場内に無限にある。(※私の体感です)
それらを全部心ゆくまで見るなんて。
無理じゃん。絶対不可能じゃん???

・・・というのが、先日行ってきた「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」 でした。

「ヒグチユウコ展 CIRCUS」は、2019年に世田谷文学館で始まり、各地を巡回して、今回の森アーツセンターギャラリーの展示が、いわゆるツアーファイナル。
(2023年4月10日まで、六本木 森アーツセンターギャラリーにて開催中)

以前、世田谷の開催時、軽々しい気持ちで見に行き、その圧倒的な力にすっかりやられてきたものでしたが。
今回は満を持してお休みの日にいってきました。

結論、やっぱりこれは無理。
あの世界を吸収できる力が、私になさ過ぎる。

あの壁にもこのケースにも、出血大サービス!といわんばかりに、絵、絵、絵、立体、アパレル、などなどが多数展示されている場内。
とにかくあるもの全部お見せします!というような、勢いある展示が素晴らしい。
世田谷の時とは見せ方がまたがらりと変わり、全く別物!という感がある。
一部を除き撮影が許可されているのも有り難い限り。


このボリューム感をご覧いただきたい。

準備万端に整えられた空間には、美しさ、精緻さ、精密さが満ち満ちている。
そして、あふれ出す素晴らしい情報が、私の視覚に無限に注ぎ込まれる。
素晴らしい。なんて素晴らしい。
そして無理。全部くまなく見るなんて絶、対、無、理!!!!

溺れながら浮き上がって息継ぎするように、会場を巡る。
場内を進みながら、何故か眠気が襲ってくる。
人間の脳は、自分が処理出来ない量の情報を与えられると動作を停止するのだ。
私はWordとExcelPhotoshopを起動されてフリーズした旧いPCの気持ちでいる。

でも言い換えれば、それは私の認識能力が全て、この会場から受け取った素敵さでフルに満たされているという事で、こんな贅沢ってあるだろうか。

ああどれもこれも。なんて素敵で、愛らしくて、情感に満ちていて。ちょっと不穏で怖くて。
図鑑の絵図のように、対象をくまなく写し取ろうとして、深淵を覗くような怖さが出てしまう感じ。
でもやっぱりどこまでも可愛らしい。

出来る事ならこの大量の素晴らしい作品ひとつひとつの端の端まで鑑賞したい。
それが叶わない。
作品を見ながら見落としていく。
贅沢で幸せで悲しい。
ああ。スーパーコンピュータ 富岳になりたい。

自分の内で「素敵・・・素敵だなぁ・・・」とうわごとのように繰り返しつつ、会場を巡り。
そして、心残りたっぷりのまま、悄然として画集を購入して会場を後にしたのでした。

とても素晴らしくて素敵で切ない心持ちでしたよ・・・。

なんか私の心象風景ばっかりなので、もっと具体的な事を。
何しろ展示されている量が膨大で、何度でも言いますが、本当に本当に見応えがありました。

描かれている対象の一つ一つに「生きてる」感が溢れてるのですよね。
細かく描き込まれた絵は勿論、本当に小さい絵や、ラフなイラストにも、こちらに訴える表情が。
特に、頭を撫でていたり、ハグしていたりする表現がとても良くて。
本当にその仕草に馴染んでいる人でないとこの感じは描けないな・・・という、体温の感覚のあるものでとても好きです。


場内は一作品にクローズアップした撮影は禁止の為、ちょっと見づらいですが。
このハグしてる感じが最高にぬくもり。

会場の設えも素晴らしい。
壁紙がね、作品のモチーフが使われている所があって、めちゃくちゃ可愛いんですよ。ここに住みたい。

絵画以外にも、人形作家さんとコラボした立体の作品とか、GUCCIとコラボしたアパレルの数々、食器や家具、舞台衣装などの展示も多数。


GUCCIとのコラボ。身悶えする可愛らしさ。


絵画以外で一番好きだったのは、トルソーとランプシェードが組み合わされた作品。
重厚で不穏で美しくて、どこかもの悲しい。これは必見だったと思いました。


ここだけちょっと空気が違っていた感。

 

・・・ということをつらつら書き、前回の、世田谷の展示を見た時のブログを読み返してみたら。
感想が(言葉は違えど)ほぼ同じで笑ってしまったわ。
進歩しねーなー俺!

それはさておき。
今回も行ってきてとても良かったです。
何しろ自分の処理能力越えの素晴らしさなので、何を言っても説明はしきれないのですが。
とても密度が濃く、でもどういう言葉がふさわしいか分からない、素晴らしい夢を見てきた・・・というような気持ち。

折に触れ画集を見て、あの時の贅沢な息の詰まる感じを思い返しております。